髭を剃り 枝を刈る

昨日も今日も晴れ。今日は寝起きでも寒さを意識しなかった、暖かい朝。
火を熾し、昨日から訪れている友人が菜の花を添えたパンを焼いてくれ、ラジオからは美しき青きドナウ。いつもより声高に歌うイカル。
春を感じたら、やろうと思っていたことのひとつ。
髭を剃る。
予想以上に軽やかな気分になる。

午前中はキウイと取り組む。伸びすぎた枝を刈る。切り口から樹液がまじったような水がしたたり落ち、痛ましい。侘びながら向き合う。やり方は正しいかどうかはわからないが、丁寧に相談しながら刈り取る。



髭を剃ることと、枝を刈ることの妙なるシンクロ。
今まで見えなかった風景が心に開ける。

刈り取ったキウイが見える青空の下、地面に座り火を熾し中華鍋を振り回す。菜の花とキャベツとハムを炒め、卵を落として炊き立てのご飯にのせる。ビールがうまい。この瞬間、日本で一番幸福だと思っても言い過ぎではないと思える。豊かな朝食、幸せすぎる昼食。それが日常として毎日ある暮らし。この土地での生活を始めれたことは、神様の仕業にしておこう。

近所のスエコさんとまた話せる。彼女の自宅からブドウ畑への道が敷地内を横切る。えんじ色の作業服に小さなリュックを背負い夕方に通りかかる。話かけると昔の話をいろいろ聞かせてくれる。敷地内の道は昔いい道だった。車なんてない頃、花嫁さんがここを通ったと。老いた女性と話していると柔らかい気持ちに包まれる。若い人はいいねと言われることに、恥じらいを感じる。




赤く染まる唇
恥じらいを忘れ
喋りだす

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